株価算定にかかる費用の相場
M&Aや事業承継で「自分の会社はいくらなのか」を知りたいとき、最初に気になるのが株価算定の費用です。
結論から言うと、依頼先によって20万〜500万円以上と大きな幅があります。
依頼先別の費用相場
| 依頼先 | 費用相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| Big4系FAS(大手監査法人グループのアドバイザリー会社) | 300万〜800万円 | 上場企業・大型案件向け。独立性・客観性による第三者への説明力が高い |
| 中堅FA・コンサル | 50万〜150万円 | M&A仲介とセットになることが多い |
| 個人の公認会計士(CPA)事務所 | 20万〜100万円 | 低オーバーヘッド。中小企業に特化 |
| M&A仲介会社の「無料査定」 | 0円(表面上) | 売却を前提とした営業活動の一環 |
※ 上記の費用感は筆者の実務見聞に基づく目安であり、事業者・案件の規模や難易度によって大きく異なります。なお筆者自身も個人の公認会計士事務所として株価算定業務を提供しており、その立場を開示したうえで記載しています。
「無料査定」の落とし穴
M&A仲介会社が提供する「無料企業価値査定」は、一見お得に見えます。しかし注意すべき点があります。
無料査定を利用する際の確認ポイント:
- 算定根拠(使用手法・倍率・前提)が開示されるか
- 売却を前提とした水準になっていないか(可能なら複数社で比較する)
- 査定後の仲介契約の義務や中途解約条件
- 成約時の仲介手数料の体系
仲介手数料は、取引金額に一定料率を乗じるレーマン方式が一般的です。これとは別に**最低報酬額(ミニマムフィー)**を設定する事業者が多く、その水準は数百万円規模のところもあれば、より低額の事業者もあり、会社によって大きく異なります。無料査定そのものが悪いわけではありませんが、「算定根拠が開示されにくい」「売却前提の高めの数字が出やすい」といった指摘もあります。上記を確認したうえで活用しましょう。
まず自分で概算を把握する
高い費用を払う前に、まず自分で概算を把握することをお勧めします。
EBITDA倍率法(業種別の標準的な倍率で計算する方法)であれば、以下の情報だけで概算が出せます:
- 直近3期分の売上高・営業利益・減価償却費
- 業種
- 有利子負債・余剰現預金の額
ValSimでは、これらを入力するだけで**企業価値のレンジ(低・中央値・高)**を即座に算出できます。
概算を持って専門家に相談するメリット
自分で概算値を把握した上で専門家に相談すると、以下のメリットがあります:
- 相場感がわかるので、不当に高い(または低い)見積もりに気づける
- 「何がわからないのか」が明確になり、相談の質が上がる
- 正式な算定書が本当に必要かどうか、判断材料になる
M&Aの初期検討段階では、必ずしも数百万円の正式な算定書は必要ありません。まずは概算で方向性を確認し、具体的に話が進んだ段階で正式な依頼を検討するのが合理的です。
正式な株価算定が必要になるケース
以下のケースでは、独立した第三者による正式な株価算定書(公認会計士等の専門家による算定)が求められることがあります:
- M&Aの最終段階(SPA〔株式譲渡契約〕締結前の価格交渉の根拠として)
- 株主間の利害調整(少数株主のスクイーズアウト等)
- 裁判・紛争(株式買取請求権の行使等)
これらのケースでは、DCF法やマルチプル法等による事業価値・株式価値の算定を通じて、独立性・客観性の観点から第三者への説明力のある算定書が求められます。
税務上の株式評価は「別物」
相続・贈与・非上場株式の移転などの税務上の株式評価は、上記のM&A向け算定とは目的も手法も異なります。これは原則として財産評価基本通達に基づく評価(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式等)で行われ、税理士業務の領域です。M&Aの価格算定(DCF・マルチプル等)と混同せず、切り分けて考える必要があります。
まとめ
- 株価算定の費用は20万〜500万円以上。依頼先で大きく異なる
- M&A仲介の「無料査定」は売却前提の営業。中立性に注意
- まずは無料ツールで概算を把握し、その上で専門家に相談するのが合理的
- 正式な算定書が必要かどうかは、案件のフェーズで判断する
※ 本記事は2026年7月6日に内容を確認・更新しています(筆者は2026年6月24日付で税理士登録)。
※ 本記事およびValSimの各ツールは、概算・教育目的の簡易モデル(固定実効税率30%・業種別の目安倍率等)に基づくものであり、実際のM&A取引価格や正式な株式価値算定の結果とは異なります。記事中の倍率・相場・料率は更新時点の目安であり、個別案件では前提により大きく異なります。実際の意思決定にあたっては、公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。