M&Aバリュエーションを「無料」で行う方法

会社の売却や買収を検討するとき、最初のステップは企業価値の概算を把握することです。しかし、正式なバリュエーションを公認会計士やFAに依頼すると数十万〜数百万円かかります。

まずは無料で使える方法で概算を掴みましょう。

無料で使えるバリュエーション手段の比較

手段費用匿名性計算根拠の開示営業電話
M&A仲介の無料査定0円低め(登録要が多い)非開示が多いあることが多い
日本公庫の譲渡価格算出ツール0円あり開示なし
ValSim0円あり(登録不要)全プロセス開示なし
Excel自作0円あり自分次第なし

M&A仲介会社の「無料査定」

最もよく目にするのが、M&A仲介会社が提供する「無料企業価値査定」です。多くの場合、会社名・連絡先を入力するとアドバイザーから連絡が入り、査定額を教えてもらえます(一部には匿名で使える簡易シミュレーターを提供する仲介会社もあります)。

こうしたサービスは営業活動の入口を兼ねていることが多く、査定後に仲介契約の提案が続くケースもあります。料金面では、従来型の仲介は成功報酬をレーマン方式で計算しつつ最低手数料を500万円以上に設定していることが多い一方、近年のプラットフォーム型サービスでは数十万円台の料金設定も見られます。「無料査定」の背景にあるビジネスモデルを理解したうえで利用するとよいでしょう。

日本公庫の譲渡価格算出ツール

日本政策金融公庫(国民生活事業)が提供する譲渡価格算出ツールです。時価純資産額に営業権(のれん)を加算する方式で、非常にシンプル。ただしEBITDA倍率法やDCF法には対応していないため、M&Aの実務で使われる手法とは差があります。

ValSim(公認会計士・税理士監修)

ValSimは、M&Aの実務で実際に使われる算定手法をブラウザで体験できる無料ツールです。

対応している算定手法:

  • EBITDA倍率法 — 業種別の標準倍率で算定。最もポピュラーな手法
  • DCF法 — 将来キャッシュフローの割引現在価値。成長企業向け
  • PSR法(売上高倍率法) — 赤字企業・スタートアップ向け
  • LBOシミュレーション — 買収資金の返済計画とIRR算出

※ 厳密には、PSR(株価売上高倍率)=時価総額÷売上高で、株式価値ベースの指標です。本サイト・本記事では簡便的に、売上高倍率で事業全体の価値(EV)を概算する意味(EV/売上高倍率)で「PSR」と表記しています。

すべて登録不要・匿名で使え、計算プロセスが全開示されます。

どの算定手法を使うべきか

手法適しているケース必要なデータ
EBITDA倍率法黒字の中小企業(最も一般的)3期分のPLデータ
DCF法成長企業、事業計画がある場合将来の売上・利益予測
PSR法赤字企業、SaaS、スタートアップ売上高と成長率
LBOモデルPE/サーチファンドによる買収検討買収価格と借入条件

迷ったら、まずEBITDA倍率法から始めるのがお勧めです。3期分のPLデータがあれば数分で結果が出ます。

無料ツールの限界と、正式な算定が必要なタイミング

無料ツールはあくまで概算です。以下のポイントは専門家の関与が必要です:

  • 正規化EBITDA調整(オーナー報酬の適正化、一時的な損益の除外)
  • 類似企業の選定と倍率の精査
  • Net Debt・運転資本の詳細分析
  • 非事業用資産の評価
  • 税務上の論点(自社株評価との整合性)

概算で方向性を確認し、具体的にM&Aが進む段階で正式な依頼を検討してください。

まとめ

  • M&A仲介の「無料査定」は営業の入口を兼ねることが多い。中立的な概算が欲しい段階では、匿名で使える手段と併用するとよい
  • ValSimならEBITDA倍率法・DCF法・PSR法・LBOを匿名・無料で試算可能
  • まずは概算を自分で把握し、その上で専門家に相談するのが最も効率的

※ 本記事は2026年7月6日に内容を確認・更新しています(筆者は2026年6月24日付で税理士登録)。

※ 本記事およびValSimの各ツールは、概算・教育目的の簡易モデル(固定実効税率30%・業種別の目安倍率等)に基づくものであり、実際のM&A取引価格や正式な株式価値算定の結果とは異なります。記事中の倍率・相場・料率は更新時点の目安であり、個別案件では前提により大きく異なります。実際の意思決定にあたっては、公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。