LBOシミュレーションとは

LBO(Leveraged Buyout)は、買収対象企業のキャッシュフローを返済原資として、借入金を活用して企業を買収するスキームです。

PEファンドや個人M&A・サーチファンドで広く使われており、**「この買収は投資として成立するか?」**を判断するためにLBOシミュレーションを行います。

LBOの基本構造

買収価格: 5億円
├── 自己資金(エクイティ): 2億円(40%)
└── 借入(デット): 3億円(60%)
    └── 返済原資: 対象会社のEBITDAから税金・設備投資等を控除した後のCF

ポイントは、借入の返済を対象会社のキャッシュフローで賄うことです。自己資金は少なく済みますが、その分リスクも高くなります。

投資リターンの指標:IRRとMOIC

LBOの投資判断で使う2つの主要指標があります。

IRR(内部収益率)

投資の年率リターンを表す指標です。

IRR評価
25%以上優良案件
20〜25%標準的(PEファンドの目標水準)
15〜20%やや低いが検討可能
15%未満PEファンドでは見送りが多い

MOIC(投資倍率)

投資金額に対して何倍になって返ってくるかを表します。

MOIC = Exit時までの累計受取額(Exit時の株式売却額+保有期間中の配当等)÷ 投資額

PEファンドでは2.0x〜3.0xが一般的な目標水準です。

なお、IRRとMOICは保有期間を介して結びつきます。**5年保有の場合、MOIC 2.0xはIRR約14.9%**にとどまり、IRR 20%を達成するにはMOIC約2.5xが必要です(MOIC 2.0xでIRR 20%となるのは保有期間約3.8年の場合)。「IRR 20%以上・MOIC 2.0x以上」を同時に満たすかどうかは保有期間次第である点に注意してください。

Excelなしでシミュレーションする方法

従来、LBOシミュレーションはExcelで3表連動モデル(PL・BS・CF)を構築して行うのが一般的でした。投資銀行やPEファンドのアナリストが作る本格的なモデルは、構築に数時間〜数日かかります。

ValSimのLBOシミュレーションでは、以下の入力だけで即座にシミュレーション結果が出ます:

  • 買収価格と自己資金の割合
  • 借入条件(金利・返済期間)
  • 対象会社のEBITDAと成長率
  • Exit倍率と保有期間

結果として年次の返済スケジュール、IRR、MOICがグラフ付きで表示されます。

シミュレーションの活用シーン

1. 個人M&A・サーチファンド

個人で中小企業を買収するケースが増えています。自己資金1,000万〜3,000万円で、金融機関からの借入と合わせて1〜3億円の買収を行うパターンです(金融機関からは買収総額の2〜3割程度の自己資金を求められることが多く、レバレッジには上限があります)。

なお、中小企業の買収資金の融資では、買い手(経営者)個人の連帯保証を求められるケースがほとんどです。「対象会社のキャッシュフローで返済する」スキームであっても、返済が滞れば買い手個人の資産に影響が及ぶリスクがある点は織り込んでおく必要があります。

LBOシミュレーションで「返済は現実的か」「何年で投資回収できるか」を事前に検証できます。

2. PEファンドの初期検討

案件のスクリーニング段階で、まず概算のIRR/MOICを確認するために使います。詳細なExcelモデルを構築する前の「ファーストカット」として有効です。

3. M&A仲介会社のアドバイザー

クライアントへの説明資料として、買収資金の返済可能性を可視化するために使えます。ただし、簡易シミュレーションであり前提の置き方で結果が大きく変わる旨を明示したうえで用いてください(中小企業庁「中小M&Aガイドライン」では、仲介者・FAは依頼者にバリュエーションの算定根拠等を説明することが求められています)。

注意点

LBOシミュレーションは「うまくいった場合」の数字です。実際のM&Aでは以下のリスクを考慮する必要があります:

  • 売上・利益の下振れリスク(感度分析で確認すべき)
  • 金利変動リスク(変動金利の場合)
  • 運転資本の変動
  • 設備投資の必要性
  • コベナンツ(財務制限条項)への抵触リスク

概算をツールで把握した上で、専門家と一緒に詳細な検討を進めることをお勧めします。

まとめ

  • LBOシミュレーションは買収の投資判断に不可欠
  • IRR 20%以上・MOIC 2.0x以上がPEファンドの一般的な目標(両立可否は保有期間次第。5年保有ならIRR 20%≒MOIC約2.5x)
  • ValSimならExcelなし・3分でIRR/MOICが計算可能
  • 概算で方向性を確認し、詳細は専門家と検討する

※ 本記事は2026年7月6日に内容を確認・更新しています(筆者は2026年6月24日付で税理士登録)。

※ 本記事およびValSimの各ツールは、概算・教育目的の簡易モデル(固定実効税率30%・業種別の目安倍率等)に基づくものであり、実際のM&A取引価格や正式な株式価値算定の結果とは異なります。記事中の倍率・相場・料率は更新時点の目安であり、個別案件では前提により大きく異なります。実際の意思決定にあたっては、公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。